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一発ネタその① [音楽うらばなし]

内輪ではあまりにも有名なギャグネタですが、悪しからず…。

その① ショパン ピアノソナタ 第3番 一楽章

冒頭部分に注意してお聞き下さい。
以下のように聞こえるはずです。

♪あらいやだ~!
 せ・ま・い~~
 風・呂・な・し・の4~~畳~~半~♪

ちなみに、大学によっては「風呂つき」と歌われる場合もあるそうで。

MIDIですがこちらで視聴できます(ピアノソナタ第3番 第1楽章をクリック)

http://www5b.biglobe.ne.jp/~hasekou/midi.htm

 

 


マル秘・練習室活用法 ――本編―― [音楽うらばなし]

第二話 マル秘☆練習室活用法 本編

(よろしければ、序章からお読みいただくとより分かりやすいかと思います)

 その日、私はとても眠たかった。
 月曜日というのは大抵そうであったが、その日も例外ではなく、週末の昼夜逆転生活が祟った私は朝からあくびの連続、その上貴重な睡眠時間とふんでいた2間目の音楽美学で予定外のレポート作成を強いられたときて、ようやく昼休みを迎えた頃にはもう限界、新橋駅周辺にたむろする泥酔サラリーマンを彷彿とさせるおそろしく締まりのない形相でもって、ふらんふらんと教室から這い出すのがやっとという体たらくであった。
 そしていつも行動を共にしていた仲良しメンバーもまた、要因は定かでないにしろまったく同様の症状を訴えていた。

 さて、場面は昼時で賑わう学生ホールの片隅。
 だらしなく背もたれに寄り掛かり、ゴム人形のように伸びきった私。
 やる気のない表情でぼそぼそとサンドイッチを口にするAちゃんの隣では、先ほどからTちゃんが机に突っ伏したままぴくりとも動かない。
 と、突然のそりと起き上がったTちゃんがうめく。
「あー、もう。机で寝てても全然疲れ取れない!」
 すかさず同調するAちゃん。
「うん。なんかもう座ってるだけで肩こってくるし」
「……どっかもっと居心地のいい場所があればいいんだけどねぇ」
 今思えば、事の発端は私のこの一言であった。
「居心地のいい場所……」
 がたんと立ち上がるふたり。
「よし、こうなったら探しにいくよ!」

 私たちはまず、各階に一箇所ずつ設けられている休憩スペースへと向かった。そこには、古めかしくもなかなかに座り心地のよいソファーがある。
 喫煙スペースをも兼ねているため服や髪にたばこの匂いがついてしまうという難点があったが、贅沢を言っていられる程の体力などもはや残っていない。
「ソファー、ソファー」
 うわ言のように呟き、ゼイゼイ息を切らせて階段を上がる。
 目指すは廊下最奥の、安息の地。

 しかしながら、やはりマーフィーの法則は存在してしまうのだ。
 そこにはしっかりと先客の姿があり、続けて向かった3階、4階のソファーもまた同様に、ギュウギュウ詰めの満席御礼状態。
 こうなったら意地になってやると、別館や同じ敷地内の短大まで回ったにもかかわらず、結果は見事に惨敗であった。

 そこにソファーがあると信じていたからこそ、のぼりたくもない階段を何段も上り下りし、別棟の短大にまで足を伸ばしたのである。
――それなのにこの結果とは!
 私たちに辛うじて残っていた文化的生物としての誇りが、しゅわしゅわと音を立てて消滅していく瞬間であった。
 
 
気がつけばたまたま目に入った空きの「練習室」に、私たちは誰かれともなくふらふらと吸い寄せられていった。
 いつもは楽器にしか用がないはずのその小部屋の中で、ピアノ下に敷かれたカーペットが何故か光を放ち「おいでおいで」と手招きをしているように、その時の私には見えた。
 そしてさすが普段つるんでいた仲間だけのことはあり、考えていた事は3人とも一緒だった。

 電気を消し、服が汚れるのも厭わず無心で寝転ぶ。予想に反し、いや、このときの心理状態においては予想通りと言うべきか、そこは驚くほど快適であった。
 時間を確かめると、昼休み終了まであと25分。
 携帯のアラームもセットし、もうやり残した事はない。
 私たちは伸び伸びと手脚を広げ、幸福の波に溺れながら、あっという間に夢の世界へと引きずり込まれていったのだった。

 としかし20分の後、私たちを眠りから覚ましたのは携帯のアラームでなく、「うぎゃあ!」という先輩の叫びであった。
 いきなり灯った照明の眩しさとその物凄い声に、私たちもつられて「うぎゃあ!」と叫び、飛び起きる。
 慌てて荷物をひっつかみ先輩に一礼すると、先を争うように部屋から逃げ出し、とりあえず学生ホールにまで舞い戻った。
「ああ、あんまり驚いて心臓止まるかと思ったよ」
 まだばくばくする胸をおさえ、口々に言い合う。
 
 しかしよくよく考えてみれば、先輩の驚きたるや我々の比ではなかったであろう。
 真っ暗な、誰が見ても無人の練習室。
 足を踏み入れパチンと電気をつけた瞬間、目に入るのはピアノの下にごろり横たわる、まるで死人のような物体なのだ。
 しかもよくよく見れば窓際に同じような物体がもうひとつ、そしてすぐ足元、死角になっていたドア脇のスペースにももうひとつ……。
 いや、これは確かに怖い。私でも怖い。

「相当びっくりしただろうねぇ」
 先輩に同情し反省するつもりが、思わずぷっと吹き出してしまう。
 
 その後もしばらくの間、その時の状況を思い起こしては、こみ上げる笑いを堪えるのに非常に苦労した。
 いやはや、何ともはた迷惑な3人娘なのであった。

 

●後日談

 さてこの話、これで終わりではない。
 練習室が思いがけずナイスな寝場所であることに味を占めた私たちは、体力気力補給の場として、その後もたびたび利用させていただいたのだった。
 さらに始末の悪い事にはそれを得意になって周りに教えて回ったものだから、
「私もやってみようかな?」
 なんて面白半分に便乗するクラスメイトもちらほらと現れ始める有り様で、「うぎゃあ!!」と叫びおののく声が、その当時の構内にはたびたびこだましていたとか、いなかったとか。
 しかも段々と欲が出てきた結果、「更に完璧な寝床づくりを目指し日々試行錯誤を凝らしていた」とくれば、これはもう今思い返してみても完璧に練習室の悪用であった。

――ああ、そういえば部屋の片隅の、いかにも不自然に置かれたコンサートちらしとトイレットペーパーの山、あれは一体なんだったのかしら。まったく練習中気になって仕方なかったわよ。

という先輩方。もしいらっしゃったら謝ります。ごめんなさい。
 
今なら白状できます。あれは、シーツと枕の材料でした。

 


マル秘・練習室活用法―序章― [音楽うらばなし]

音楽うら話、続いてのお題は「練習室」です。

第二話 マル秘・練習室活用法 ―序章―

●序章 練習室とはなんぞや
 
 一度でも足を踏み入れたことのある方ならばお分かり頂けると思うが、音大や音高といった場
所には必ず、「練習室」または「レッスン室」と呼ばれる小部屋群が存在する。
 それらは学校によって数、広さともにまちまちであるが、各部屋平均6畳から8畳ほどのスペ
ースを有しており、そこが日本であると想定するならば、そのほとんどにグランドピアノが1台もしくは2台鎮座しているのが通常である。
(海外の音大になるとピアノつきの部屋は全体の8割といったところか)
 
 言うまでもないが、「練習室」とは楽器練習を行うための場所である。
 普通大学に通う学生らが、やれ合コンだサークルだ、と青春を謳歌しているその間も、音大生
たる者練習を怠けるわけにはいかない。
 夏は馬鹿のように暑く、冬もまた阿呆のように暑い、練習室という名の狭苦しい箱の中に、音
大生は日々弾きこもる。そしてそれは古今東西変わらぬ事実なのである。
 一般学生の気ままさを羨み、一日足りとも練習を欠かすことのできぬ自らの境遇を呪い、やっ
ぱりそれでも練習から離れる事が出来ない……どうしようもない生真面目さと音楽への情熱を、音大生の99%は持ち合わせているものなのだ。

 しかしながら、サルも木から落ちれば河童も川流れするのが世の常というもの。チョコスナックのコアラの中にも時たま、まゆげつきのヘンテコリンが紛れ込み……と何が言いたいのかというとそれは何事にも例外は存在するよ、とそういう事であって。
 つまり、その1%の例外たちが考え出したとんでもない練習室の使用法こそが、今回の小噺の
テーマ。
 そしてお恥ずかしながら、何を隠そうその不真面目かつ不届きな学生のひとりが5年前の自分
自身であったことを、私はまずここに告白しなければならないのである。
 

<本編に続く>

 


音入れの苦悩 [音楽うらばなし]

さて、早速始動した「うらユキルダム王国」。
<うら>の名称に相応しく、音楽うら話でも書いてみようかと。

第一話 音入れの話

 音入れ。
 ああ。この懐かしい響き。
 この4文字の言葉を口に、あるいは耳にする時、私は音大時代の、あの汗と涙にまみれた青春
の日々を思い起こさずにはいられないのだ。

 こしいれ、パイプ椅子、はくいれ……など、私の記憶を呼び起こすキーワードは他にもあるといえばあるのだが、語感の良さ、インパクトなどを考慮してみても、やはりこの音入れに勝るものは存在し得ない。
 音入れには確かな存在意義があり、真剣に向き合えば向き合っただけの恩恵を、それは確実に
与えてくれた。
 音入れを一度なりとも体験してしまった者は誰しもその魅力にとりつかれ、気づけば私もいつ
の間にか音入れ信者のれっきとした一員であった。
 鍵盤の蓋を開ければいつもそこに、音入れは存在していた。
 そう、そしてそれは必然であった。

 前置きが長くなってしまったが、音入れというのは言葉そのまま、音を入れ込む作業の事であり、まぁ、乱暴に分類してしまえばピアノ練習法の一種である。
 これはクラシック界の中でも限られた、一部関係者のみぞ知る我が教授秘伝のとっておき中の
とっておきの裏技であるので、弟子の守秘義務の名において、ここで詳しいやり方を供述することは少々憚られる。
 しかし「音入れとは何ぞや?!」という興味のもと、せっかくここまでこの駄文を読んでくだ
さった方々のことを思うと、その期待を裏切るなどという鬼畜な行動を取る事は非常に心苦しいのもまた事実であり、自己顕示欲溢れる小心者の私なんぞは、一体どうしたらよいのか、そもそも何故この題材で書き始めてしまったのだ、と自らの浅はかさを呪い始めたくもなる始末である
 
 とまぁなんだかんだ言ってはみたものの、とりあえず「周りにいらっしゃる音楽関係者の方々にはくれぐれも内密にすること」をお約束いただいた上で、簡単に概要だけ説明させていただくことにする。

 <音入れの目的>
 これは単純に指先の強化、ということで間違いないと思われる。

 <音入れの効果>
 先に述べたように指先が強化されることはもちろんであるが、その他にも
 音の粒の均等化、メジャーテンポの確立、リズム感の上昇
 などなど、数え切れないほどの付加効果を与えてくれるのが「おといれ」であり、その中毒性
の所以たるところである。   

 <音入れの手順>
 基本的には一音につき3回繰り返すのが正しいとされており、例えば「ドレミファソ」という
パッセージであったならば「ドドド、レレレ、ミミミ、ファファファ、ソソソ」といった具合になる。

 さて、問題はここからだ。
・ありえないくらいの大音量で行うこと。
(フォルティッシモを3乗くらいした音を想定していただきたい)
――これが音入れの最も重要かつ難解な部分なのである。
 ピアノが壊れるほどの激しさと力強さ、親のカタキをとるくらいの勢いと執念が、我々には要
求されるのだ。

「おねえちゃん、ご飯よ~。……あら、聞こえないのかしら。ちょっと悠ちゃん(小学生の弟)、お姉ちゃんに声かけてきて」
「うん分かった。お姉ちゃん、ご飯だよ」
「ご飯だよ~!」
「もう。ご飯だってば~~!!」
「ごはんだよ~~~!!」
「ごはん!!」
「ご・は・ん・だ・よ!」
「……」

「ごはんだってさっきから言ってるんだぁ、おんどりゃあ!!」

 まだ小学生の、あどけなくまるで世俗にまみれていない(はず)の弟が、何のアニメの真似をしているんだか、突然人が変わったように信じられない暴言を発し、それを聞いてまぁ大変と慌てた母が言葉遣いを諭そうと盛り付けの手を休め、
「ちょっとこっちに来なさい」
 と声を荒げたところでもう時は既に遅し、
 すっかりアニメの世界が乗り移ってしまった弟はますます調子に乗って男気溢れる台詞を繰り
返し、その様子を見て
「あはは。ウケるー」
 なんて笑っていた上の弟までもがいつの間にか便乗し戦いごっこが始まり、気がつけば、ディ
ズニーランドで買ったフック船長のかぎ爪をはめた下の弟VS同じくDL製のごむ蛇を左手にぐるぐると巻きつけた上の弟の、熾烈な戦いがリビングで繰り広げられる有り様。
 運悪く上の弟から発せられた炎殺黒竜波がゴム蛇とともにダイニングテーブルをかすめれば、
気の毒なツナと玉ねぎのサラダががしゃーんと凄まじい音をたてて辺りに散乱し、読んでいた小説のここぞという感動シーンをぶち壊された父が、とうとう
「おい!いい加減にしろ!!」
 と浅田次郎を握り締め立ち上がる。

 と、私はそこで初めて、
「あら、何か言ったかしら?」
 と顔を上げなくてはならない。
 これこそが正しい音入れの姿というものである。
(念のため言わせていただくが上記の家庭の描写はフィクションであり、正しく音入れに取り組
んでいる私には、それらの言動はまったく聞こえていない。というか、聞こえていてはならない

 と、とにかく。
 音入れというのはかくも奥の深い、強靭な肉体と精神が要求されるトレーニングなのである。
 それによって皇室のように優雅だった家庭が一瞬にして吉本新喜劇に姿を変えてしまったとし
ても(再注:たとえ話)、ピアニストになるという夢を実現させるためには涙を飲んでそれを犠牲にしなくてはならぬ。
 嗚呼、音入れとはなんと悲哀に満ちた行為であろうか!
 星の数ほどもあるピアノ曲のうち、おそらく難曲ベスト10にランクインするであろうプロコ
の戦争ソナタやラヴェルのスカルボ。それらを弾きながら、私は思う。
「音入れさまさま、ありがとう。こんな曲が一応それなりに弾けるのも、きっとあなたさまのお
陰です」


 さて、最後になってしまったが音入れにまつわる忘れられないエピソードを、ひとつ紹介させていただこう。

 場所は都内某所。教授の自宅にあるレッスンルームでの出来事である。
 その事件はちょっぴり天然の素敵な先輩、Rちゃんのレッスンを聴講している時、突如起こった。
 その日Rちゃんはどうしたことが調子が悪く、落ち着きがなかった。演奏にも小さなミスがちらほらと見られ、
「もういいわ。いったんストップ!」
 と、とうとう教授に演奏を中断させられてしまった。
「あなた。音入れが足りないのよ。ちゃんと音入れしてるの?」
 練習不足を見越した教授の厳しい一言。
 Rちゃんは真っ赤になってうつむいてしまう。
「……はいすみません。じゃあちょっとお借りします」
 そう言って、おもむろに立ち上がるRちゃん。
 向かった先は、

 そう、お手洗い。

 数分の後、Rちゃんは言われた通りにきちんとおトイレを済ませ、唖然とする我々を尻目に、見違えるようにすっきりとした表情で再びピアノを弾き始めたのであった。

 


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