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3.出発の日 [ドタバタ留学記]

3.出発の日

時間はびっくりするほどあっという間に過ぎ、とうとう出発の日が近づいていました。家が決まっていないことを心配したのか最初の十日だけ、父も同行してくれることに。
旅立ちにせっかく覚悟を固めた私にとって、この申し出は正直拍子抜けでした。
「両親と空港で涙の別れ……っていうのが普通だよ」
と断ってはみたものの、
「そうか。もう子供じゃないんだな……」
とそれはそれは寂しそうに呟く父の背中に負け、結局好意に甘える事になったのでした。

父は、私に無条件に甘いのです。3人の子供のうち弟2人にはどちらかといえば厳格な態度を保っているのですが、やはり女の子に甘くなってしまうのが世間の父親というものなのでしょうか。

そうそう、今年のお正月里帰りした時、こんなエピソードがありました。
うなぎが食べたいという私のリクエストで、その日の夕食はうな重。食後、ソファに寝転んで本を読んでいるとなんだかリビングが騒がしい。
「ほんの3.4口分だけ残すなんてもったいないだろう。男なら最後まで食べなさい」
どうやらお重に残ったご飯の、あまりに中途半端な残し方を見かねた父が、弟に注意しているようでした。
「いいか、世界には食べたくても食べられない貧しい子供達がたくさん……」
「待ってよ。それ残したの俺じゃないって」と上の弟。
「ん?じゃなんだ。ゆうちゃんが残したのか?」
「僕、全部食べたもん!」とふくれたのは小学生の下の弟。
「あ、ごめん。残したの私だ。もうおなかいっぱいで」と私。
「……なんだ、お姉ちゃんか」
あっさり父は引き下がり、新聞を読み始めました。

これで一件落着……とはもちろん問屋が卸さず。
「なんで、お姉ちゃんには注意しないのー!!」
「パパはお姉ちゃんしか好きじゃないんだー!!」
と弟達からの猛反撃は至極もっともで、
「いや、お姉ちゃんは女の子だし、二十歳超えた大人だし……」
とうろたえる父なのでした。

私もとばっちりを受け、溺愛している下の弟に
「ふんっ。お姉ちゃんなんか」
とそっぽを向かれ少なからず精神的ダメージを受けたのですが、30分後にはすっかり元に戻ったので一安心。
次の日にはもうすっかり忘れているようでした。
男の子ってなんて単純。でもそこが可愛いところ。
だからこそ父も心置きなく叱れるのだと思います。私も単純ですが、けっこういろんな事をしつこく覚えてたりするので、そこはやはり男女の精神構造の違いなのでしょう。

……とまぁ、かなり脱線しましたが、留学の旅立ちに同行することになったのも、そんな娘に甘い父だからこそ。しかし実際、渡蘭後おこった様々なハプニングで大人の男性の存在は非常に貴重であり、また精神的にもかなり助けられたのが事実です。

そしていよいよやってきた出発の日。

出発前日から空港に隣接されたホテルに泊まり、充分余裕を持ち離陸3時間前には空港内に到着していました。
ちょっと早く着き過ぎたなと思っていた私でしたが、結局搭乗時間ぎりぎりにゲートに駆け込むことになるとは……。

というのも、荷物の制限重量にひっかかり大幅に時間をロスしてしまったせいでした。日本からオランダへ物を送るのは決して安くありません。重さにもよりますがちょっとした衣類や食料を送るだけでも1万円近くかかるのです。それだったら最初にすべて持っていくのが賢いやり方だと、私は大荷物をかかえていました。
衣類に限っても夏服だけでなくセーターやコート類までぎっしり、そのほかにも大量のレトルト食品やらお土産類、楽譜やCDなどなど。
結果私の荷物は最大サイズのトランク4つにボストンバック3つというとてつもない量に達していたのです。
(それでもかなり苦労して減らしたのです。最初はCDコンポやくまのぬいぐるみ、それに物干し(!)まで持っていこうとしており、さすがに母に止められました。現地調達ということは頭の片隅にもありませんでした。到着後、「なんだ、なんでも買えるんじゃない!」とびっくりしました。私はオランダを相当見くびっていたようです)
「これで後から何も送らなくていいはず。私ってばしっかり者!」
と呑気にしていられたのもつかの間、重量制限のことをすっかり忘れていました……。

父とふたり分ではあったものの、それにしても目をつぶる事の出来る範囲を大きく超えた重さであることは明白でした。
本来ならばひとり25キロが限度のところ、なんと私の荷物は120キロ!
「お一人様25キロまでですが特別に30キロまではお積みいたします。お二人で60キロです。残りの60キロは大変申し訳ないですが承りかねます」
常識を超えた重量オーバーの値に顔面蒼白の親子を見て同情気味のスチュワーデスさん。
恐る恐る、いくら支払わなければ尋ねてみてその数字に腰を抜かしそうになりました。ウン十万、桁が違う……。

とりあえず罰金で解決する事が有り得ないと分かったのでなんとか荷物を減らすしか選択肢はありませんでした。
すぐに使うもの、後から必要なもの、としっかり分類しておけば良かったと後悔しても後の祭り。
4つのトランクの中身は、すぐ必要な夏服や楽譜も、当分必要ないコートやレトルトカレーもごちゃまぜという最悪な状況でした。
空港のロビーで一から詰めなおすのはさすがに無理だと判断し、結局比較的重要なものが多く詰められているトランク2つを選び、残りの2つは後から宅配便で送ることにしました。また紙袋を買ってとりあえず重そうなものを機内持ち込みに切り替えました。
それにしても預ける荷物は1キロ単位で厳しく制限するのに、持ち込みは無制限というのはかなり矛盾していますよね。トランクから紙袋に詰めたところで飛行機にのってしまえば総重量は一緒なのに……。でもまぁ、ここでもし手荷物まで制限されていたら困るのは自分なのも確かな事。深く考えないことにし再びカウンターへ向かいました。しかしまだ5キロほどオーバーしており、これには流石にげんなり。もう詰めなおす気力もなく、何より搭乗時間がせまっていました。

結局父の判断でけして安くはないお金を払い、そのまま預ける事にしたのです。それにしても宅配便の分とあわせ予想外の大出費。
ふと時計を見ると、
「大変!搭乗まであと5分!!」
想像していた感動的な旅立ちのシーンはどこへやら……。

すごい量の手荷物を抱えゲートへ全力疾走しながら、出だしからこんな調子で大丈夫かととてつもなく不安になった私なのでした。


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